【3日目】スペイン コルドバ 2019
スペインに来て3日目。今日だけ、移動のない日。しっかり観光できる、とは思っていなくて、日本は月曜日だから、しっかり仕事したいと思う。
ホテルのハルディン(中庭)で、早朝の食事? ではなく、コメドールは地下にあった。
今日は、衝撃的な一日となったので、事前に予告しておく。
食事をとってから、10時まで約3時間ほどメール処理など。
ホテル周辺は、観光地としても有名な「花の小径」。迷路のように入り組んでいる。
見えてきた、コルドバで最も有名なスポット、メスキータの尖塔。93メートルもあるらしい。
2万5000人を収容する大モスクだそう。イスラム教徒によって785年に建設されたのだから、かなり古い。500年後の1236年から、この土地の実験を握ったカトリック教徒が、内部にカテゴラル(大聖堂)などを新設したりして、世にも珍しい「2つの宗教が同居する建築物」になったとか。
このことを意識せずに入館したため、私はあとで度肝を抜かされることに。
周辺は観光地になっている。
今回は小さなリュック一つで来た。キャスター付きのバッグにしようか迷ったが、石畳の道がどれぐらいあるか気になったのでやめた。リュックで正解だったように思う。(毎晩、下着を洗う必要があるが)
モスクの中に入ると、チケットを購入する人の行列が目に入る。なんとなく尻込みして、また外へ出た。
以前、サラマンカ市にいたころ、よく食べた「パン・コン・ハモン」。この長いバケットを手にしながら、花の小径をぶらぶら歩く。
同じような道が続く。
ぐるぐる回っていると、だんだん道に迷ってきた。
疲れてきた。
結局、モスクに戻って、端っこのほうに座り、パソコンを開いて、また仕事に取り掛かる。
このような景色を観ながら、キーボードを叩いていた。
行列がなかなか短くならないので、入館することに決めた。
メスキータの最大の特徴である、馬蹄形のアーチが見えてくる。
無限に連なると思われるようなアーチ群。
イスラム教徒のモスクなのに、壁や天井に、カトリックの礼拝堂にみられるような絵画が見受けられる。非常に不思議で、違和感のある世界だった。
単純な造形が重なり合い、深い奥行きをつくりだす様は、とても興味深い。
モスク内に設置された椅子に座り、またパソコンで仕事をした。
セマナサンタだからか、多くの観光客の姿が。
天井からの光が、強い陰影をつくりだしている。面に対する光の当たり方によって彩度も変化し、奥のほうが神秘的な眺望をつくりだしている。
連続するアーチが、異世界へと私たち人間をいざなっているかのように見える。
アーチに導かれて奥へ進むと、様式が異なる内壁が見えはじめた。なんだ、コレは。
ん……。な、何?
なんだ、突然あらわれた。コレは何だ?
おおおおおお!
ここ数年、声をあげて驚いたことなど、あっただろうか。しかも、建造物を観て興奮して。これが、メスキータ内のカテドラル(大聖堂)か。
天井を見上げる。うぉおお、凄い。
しばらく圧倒されていて気付かなかったが、目を横に向けていくと、また異なる情景が飛び込んでくる。
な、何だ、コレは。
自然とまるで調和しようとしない、圧倒的な「芸」の集合体が目の前にあらわれてきた。
おおお……。なんという、圧迫感。
脳が処理しきれないほどの造形の嵐だ。
謙虚さ、繊細さとは対極にある、周囲の空気を制圧するような芸術だ。イスラム教徒のモスクなのに、なぜ、これほど高慢な建造物が。
くどい。くどすぎるが、極端なほどの、くどい様式美に酔ってしまいそうだ。
これは下品を通り越した、芸術だ。
いずれ飽きるだろうが、飽きるまでの時間までは堪能したい。
いやあ、凄い。もう一度、カテゴラルを正面から眺める。
ディテールをアップで。
パターン化しているようで、していない。
もう一度、見上げてみる。
これまで目にした建造物で、良くも悪くもいちばんインパクトがある。と思った。
イスラムのミフラーブ。
幾何学的な模様が、見受けられる。いかにもイスラム様式的な美しさ。
天井にも、似たような造形が。先ほど目にしたカテゴラルとは、まったく異なる様式。時代も500年ほどか、ズレている。同じ建物内だというのに。
再び、アーチ群を目にしながらメスキータを後にした。素晴らしい体験だった。今回の旅行の最大のトピックは、アルハンブラ宮殿である。
いくらアルハンブラ宮殿とはいえ、このメスキータ以上の衝撃を受けることは、ないと思う。
再び、花の小径をたどる。暑くなってきた。
混んでいる店には入りたくない。
なので、あえて「高いそうで」「まずそうな」店を選ぶようにしている。当然、人は少ない。日本では、めったに外でお酒を飲まないが、ここでは昼からセルベサ(ビール)を。
まずそうだと思ったが、意外にも美味しいレストランだった。遅いランチをとる。
スペインに来ると栄養が偏るので、選べるときは魚料理を積極的に頼む。魚介類のスープを頼んだら、非常に濃厚で、栄養のありそうなスープが出てきた。
魚料理もおいしかった。
ほろ酔いで、花の小径を歩き、ホテルへ向かう。
仕事があるので、ホテルへ。犬がけだるそうに、座っている。
3時間ほど、部屋で仕事をしてからロビーで軽食を。夜のセマナサンタ(復活祭)に備える。
部屋から、小径を見下ろす。ここをプロセシオン(聖行列)が通ると言うのだ。
徐々に人が集まってくる。騒々しくなってきた。
ずいぶんと待つと、あらわれた。プロセシオンだ。
非常に長い行列。白い煙がたかれ、一時期、周囲が真っ白に。
台にのせられたキリスト像が真下を通り過ぎる。
ホテルの目の前で止まって、何やら唱える聖行列の方々。
非常に厳粛な行事であった。グアテマラで観たセマナサンタとは、かなり異なる気がする。ホテルの場所、部屋の向きなど、こんなに恵まれた場所で鑑賞できて、本当にありがたい。
今日は一日、いろいろなことを考えた。日の沈まぬ国と言われたスペインは、日の沈んだ国と言われて久しい。
日本もまた、過去の栄光の延長線上にいる国となるのか。日本の企業を現場で見ていると、そうなっていくのは間違いないとも思える。そして自分はどうなのだろうか。
いろいろと考えさせられる日だった。